「99歳にもなったら入れる施設なんてあるのだろうか…」こんな悩みを抱えてはいませんか?現代社会は「少子高齢化社会」と呼ばれ、人口に占める高齢者の数が増えてきています。また、医療の発達により寿命はどんどん長くなっており、介護に関する悩みを抱える人も多いのではないでしょうか。
そんな方に向けてこの記事では、高齢者施設で働く私が、99歳の方でも、自分らしい生活を送る為の現代の老人ホームについて解説します。
老人ホームの種類
一言に「老人ホーム」といっても、たくさんの種類があることをご存じでしょうか。老人ホームは高齢者の自立度や介護度によって、提供するサービスが異なります。どの施設が自分の家族に適しているのかを判断するには、各施設の特徴を理解しなければいけません。
施設によって入所の際の基準も違い、そこを間違えると適切なサービスを受けられないなんてことも起きてしまうかもしれません。なので、代表的な施設の特徴を1つ1つ詳しく解説していきます。
介護付き有料老人ホーム
皆さんが想像する一般的な老人ホームに近いかもしれません。特徴としては食事や身体介護、リハビリなどの幅広いサービスを受けることができる一方で、お部屋のタイプは原則個室になっているので、比較的生活の自由度が高いことが挙げられます。
施設の設備も整っているところが多く、生活するうえで不便を感じることは少ないと思います。また、待機者の数が少なく入所までのハードルが低いことや、よっぽどのことがない限りは途中で退所になることはなく、長く利用することができます。
しかし、主に民間の企業が運営することが多いため費用が高いことがデメリットといえるでしょう。
特別養護老人ホーム(特養)
特養は介護付き有料老人ホームなどに比べて、重度の介護が必要な方のための施設です。特徴としては原則、要介護3以上の方が対象となり、身の回りの生活全般の介護を受けることができます。しかし、部屋のタイプは多床室が多く、生活の自由度は少し低いかもしれません。
特養は「高齢者の終の棲家」と表現されることもあり、積極的なリハビリや医療、看護などは少なく、1人1人のペースに合わせたサービスを提供する印象を受けます。主に地方公共団体や社会福祉法人が運営する公的な介護施設になるので、少ない費用で長期入居できるのがメリットですが、そのため待機者の数が多く、入所するまでに時間を要することが多いです。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サ高住は見守りや生活相談を受けることのできる高齢者向けの賃貸住宅になります。特徴としては常駐する介護スタッフがいないため、比較的、自立度の高い方向けの施設で、見守りのついた一人暮らしといったイメージに近いです。
基本的に他の施設で行うような、リハビリや身の回り全般の介護などはなく、サービスは必要最低限といった印象を受けます。時間の拘束などがないことは良いのですが、費用が高く、場合によっては転居しなければならない可能性があり、住み続けられる確約がないことが最大の不安要素といえるでしょう。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは介護をあまり必要としない自立度の高い方や、反対に介護度の高い人まで幅広く利用することのできる施設です。特徴としては、施設の定めたサービスと、在宅介護サービスの中から受けたいものを選択し、組み合わせて受けることができるという選択の自由度の高さがあります。
また、老人ホームの特徴である、イベントやレクリエーションなどの生活の質を高めるためのサービスが充実しており、他の入居者さんたちとのコミュニケーションを楽しみながら生活を送ることができることも魅力の一つです。
今まで独居で寂しい思いをしていたという方には特におすすめの施設の1つです。
介護老人保健施設(老健)
老健は特養と同じ公的な介護施設ですが、「在宅復帰を目指す」ことを目的としており、比較的、介護度は低い方が対象となる施設になります。特徴としては医療管理下での看護や介護、回復リハビリなどのサービスを受けることができます。
また、常勤の医師がおり、医務室の設置が義務付けられているため、急な対応が必要な際などの安心感があることが魅力です。ですが、在宅復帰が前提にある施設なので継続して入居ができるかどうかの判断を3か月ごとに行い、継続が必要ないと判断されるとほかの施設に移らなければならないことがデメリットとしてあります。
介護医療院(介護療養型医療施設)
介護医療院は、最近創設されたばかりの比較的新しい施設で、医療設備の充実を重視しているため、介護度の高い方の中でも、より医療ニーズの高い方に対応可能な施設です。特徴としては医療設備の充実と、医師、看護師、薬剤師、栄養士などの医療に特化した職員配置が義務付けられていることが挙げられます。
なので、他の施設では受け入れの難しい「人工透析」や「胃ろう」などの問題を抱える方でも入所を検討できることが、最大のメリットといえるでしょう。また、看取りやターミナルケアも行っており、最後まで施設で面倒を見てほしいという希望のある方にとっても最適な施設といえるでしょう。
その他の施設
上記で紹介してきた施設のほかにも様々なサービスを提供する老人ホームが存在します。例を挙げると、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送りながら、介護やリハビリを受けることのできる「グループホーム」や、比較的、介護度の低い方が低い費用負担で利用できる「軽費老人ホーム」などがあります。
また、老人ホームではありませんが、高齢者が自宅での生活を継続していけるように通いでのサービスを提供する「デイサービス」などもあります。デイサービスでは行き帰りの車での送迎があり、通うことに対する負担も少なく、食事や入浴などのサービスを受けることができます。
また機能訓練やレクリエーションなどの身体を動かすプログラムが充実しており、心身の健康を維持していくことができます。介護度が低く、老人ホームに入るほどではないがサポートが必要という方には最適なサービスになっています。
社会問題である介護に対しては色々な手助けが用意されている
介護の悩みを抱える人はこれからも増えていきます。しかし、在宅で介護を続けていくことはとても難しく、いつか限界がやってきます。そんな時はためらわずに他者の手を借りましょう。正しい知識を身につけ、行動を起こせば何歳からでも受け入れてくれる施設が必ず見つかるはずです。
それでも、どうすればいいか分からない場合は、地域の相談窓口に相談することをお勧めします。きっとあなたの力になってくれることでしょう。